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勲章


みなさんこんにちは。
世の中には絵がうまいやつというのは腐る程います。むしろ、もう腐ってます。
その中に、ほんの一握りすげえやつが混じってます。
今日はそんな一人を紹介したいと思います。
彼の絵を見たのは、長崎美術館での展覧会でした。
当時俺は、高校生です。
今でも忘れられない展覧会の一つです。
その名は鴨居玲
自殺した馬鹿、という意味では全く尊敬も出来ないやつですが、彼の絵はホンモノです。
心に響くというと安っぽい言い方ですが、俺はそもそも文が下手なのでガンガン安っぽいいいかたしますw
彼は大学を卒業して、当時抽象画が主流だった日本の絵画に疑問を持ち、全く絵が描けない10年間を送ったあと、スペインのどっか(たぶん)にいって貧しい人たちを描き始めます。
ここで彼は、自分が描きたいのは人間だと気づき、それからひたすら人間を描き始めます。
といっても、彼が描く絵は人間の中身本質なのです。
そして、それはすべて自分自身でもあるのでしょう。
道化師や酔っぱらい、浮浪者を描きながら、彼らは自分自身なんです、と言う言葉が残っています。
さて、今日の一枚。この作品は「勲章」というタイトルがついています。この作品は彼が残した自画像の数あるなかの一枚です。
まず、はじめに注目すべきは胸の勲章ですね。はい、瓶のフタです。何が言いたいのでしょう?名誉や地位に対する反逆でしょうか?それとも酔っぱらった自分?その勲章を誇らしげにポケットに手なんていれながら胸を張っていますね。
でも、なぜだろう半開きの口で何かを言いたそうにこちら側を見据えてくる顔。
わかりませんね。あなたにはどう見えますか?俺にはすべてを馬鹿にしながら、一番馬鹿なのは俺なのさッと言ってるように見えます。
彼は一枚の作品を描き上げるのに100枚のデッサンを自分に課せたことでも有名ですが、彼の絵の美しさは色にあります。
こんな写真では絶対にわかりません。
油絵の具の持つ独特の色の深み。
薄く何重にも重ねられた油絵の具が、光にかざされた時、下の層の色がゆっくりと透ける時に見せる独特の表情。
彼は色で感情を表現した画家です。彼の黒にはただの黒ではない深い黒が描かれています。
黒をそのまま使うより、少し青を混ぜた方がより黒い色を表現出来るとかいうちゃちな色ではありません。
うんちくになりますが、現代にはアクリル絵の具という非常に便利な絵の具が存在します。
乾燥がはやく発色もよい。
油絵の具のように、盛って使うことも出来る。
すばらしいですね。
ただ、油絵の具とアクリル絵の具では根本的に違うところがあります。
アクリル絵の具や他の絵の具は、ほとんどが水分が蒸発して乾燥するのに対して、油絵の具は油ごと一緒に乾燥しキャンバスに定着していきます。
そこで、彼の作品のように油の層ができ、まるで鉱石のように透き通った色が出来るわけです。
さあ、彼はうつろな顔でこちら側にいったい何を訴えているのでしょうか?
不思議ですね、鴨居玲のこの自画像をみていると、彼の中に自分を見てしまいませんか?私は何をしたいんだろう?

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